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執筆者の写真青桃

「今の見た?あれは本物?映画の撮影?」

9.11アメリカ同時多発テロ事件が起きたとき、何をしておられたか覚えていらっしゃるでしょうか。2001年9月11日(火)青桃は薬局の新規開局を2ヶ月後に控え、新しいお店で冷蔵ショーケースを磨いていた。時刻が夜10時を回り、店舗のテレビをふと振り返る。画面には、超望遠レンズからの映像のせいであろうか、音も無く2機目の旅客機がツインタワー南棟に突込していく瞬間が映し出されていた。しばらく呆気にとられていたが、思わず知らず受話器を手に母に電話をかけていた。「今の見た?あれは本物?映画の撮影?」青桃は浅はかにもそう尋ねていた。 これまでも湾岸戦争や阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件などの生中継は観てきた。とは言えいずれも発生後の状況をライブで伝えるものでしかなかった。発生の瞬間をとらえた9.11事件はそれらとは別次元。ビル突入から崩壊までの一部始終をテレビを通して世界中が目撃した。大きなる犠牲は、時にそのひとつひとつを匿名性という大きなる渦に呑み込み埋没させてしまう。本来尊重されねばならぬ死は、不特定多数として無慈悲なまでに容赦なくひとくくりにされてしまう。テレビの傍観者は完璧に安全な向こう河岸からいとも容易くこのような死の現状に立ち会った。 仮に人類が滅亡する日であろうとも、カメラは淡々と回り続けるのであろう。冷静という名の冷めた眼差しで人類が滅び行く有様を撮しながら。たとえ見届ける者がおらなくなろうとも、動力源が尽きるまで。世界のカタストロフィー(破局)を黙過する、そんな時代に足を踏み入れたのだ。 あれから9年6ヶ月後、この日本でまさかこれとまったく同じ感覚に陥るとは、その時は思いも寄らなかった。日本時間2011年3月11日14時46分、何をしていただろうか?


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